企業にとって最も大事な資産となるのがヒトです。そのヒトを管理する業務が労務管理です。
近年、働き方改革の推進が進んでいますが、まだまだ残業時間やブラック企業などが問題となっているため、労務管理をさらに徹底することが求められています。
では一体労務管理とはどのような意味を持ち、どんな業務なのか、わかりやすく紹介していきます。
労務管理とは
企業の経営資源は以下の4つからなります。
- ヒト
- モノ
- カネ
- 情報
労務管理は、この内「ヒト」の管理を行う業務となっています。もう少し簡単に話すと、労務管理とは従業員が仕事をしていくなかでの労働条件や社内の規律などの管理をする業務を指します。つまり労働に関する事務になります。
労務管理の目的としては、従業員が働く労働環境を整え、さらに従業員のモチベーションを上げることで生産性の向上を目指していくことにあります。そのためには福利厚生を整えたり、従業員への賃金の調整や適切な人員配置などの従業員のための施策を実施していくことが主となります。
このように従業員が高いパフォーマンスを発揮できるようサポートを行っていくことで、効率的な生産性を生み出し、企業としても大きく成長していくことが可能になるのです。
労務管理の基本、法定三帳簿
労務管理において、非常に大事な役割をもつ3つの帳簿があります。
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
これらは労働基準法で定められており、3つ合わせて法定三帳簿と言われています。法定三帳簿は企業の作成が義務付けられており、また3年間の保存義務もあります。
1の労働者名簿は従業員を雇い入れたら、一人一人の個人情報を記載しておく帳簿のことを指します。従業員が退職もしくは死亡後3年間は会社に保存しておかなければなりません。
2の賃金台帳は簡単に言うと給料を支払った記録のようなものです。給与明細を1年分として1つにまとめたものをイメージするとわかりやすいかもしれません。最後に賃金を支払ってから3年間が保存期間になります。
3の出勤簿とは従業員の出勤退勤履歴を確認できる書類またはデータになります。ですので出勤簿には、従業員が出勤・退勤した時間を正確に記載しておかなければなりません。記載しなければならない対象者は、裁量労働制が適用された労働者や日雇い以外の全ての労働者になります。保存期間は最終出社日から3年間なので、退職した従業員がいても3年間は会社に保管しておかなければなりません。
労務管理の仕事
労務管理の仕事は、従業員を雇用した瞬間からはじまります。ヒトの管理を行う業務というだけあり、従業員と密接に関わっていく仕事となっています。
- 社会保険や労働保険の手続き
- 給与計算
- 勤怠管理
- 労使関係管理
- 安全衛生管理
1の「社会保険や労働保険の手続き」では、社会保険は健康保険・介護保険・厚生年金保険があります。また労働保険は雇用保険・労災保険(労働者災害補償保険)があります。従業員を採用した時や扶養加入削除、住所変更、育児休業などの手続きで行われます。保険に関しては、とても奥が深いので別記事で改めて紹介いたします。
2の給与計算はそのままで、働いた分の賃金を計算する仕事内容となります。給与からは住民税や所得税など複雑な計算もありますので、ある程度の知識が必要となってくる仕事となります。
3の勤怠管理ですが、毎日どの従業員が何時間働いて時間外労働は何時間かなどを把握する必要があります。これらは給与計算だけでなく、人事評価を始めとした有給の管理にも重要となってきます。とても正確さが要求される仕事となります。
4の労使関係管理では、労働者と使用者の関係性を労使関係と呼び、これらで起きたトラブルの解決や労働組合との交渉に対応することが求められる仕事内容となっています。
5の安全衛生管理の主な仕事は、みなさんの会社でも実施しているであろう健康診断の実施などがあたります。その他にも近年のストレス社会の影響もあり、2015年12月からはストレスチェック制度というものも導入されています。
まとめ
一言に労務管理と言っても、仕事内容や関係する専門知識は多様で、全体を把握するにはそれなりの知識量が必要です。
ただ労務管理を適切に行うことで、会社の生産性向上や従業員に関するリスクの回避や軽減につながっていきます。また労働基準法などの法令に基づくものとなるので、理解も十分にしておく必要があります。
ただ相手がヒトなので、達成感は社員からダイレクトに返ってくるのでやりがいのある仕事とも言えるでしょう。興味があれば、一度勉強してみるのも良いのではないでしょうか。